竹田と前野が下駄箱から外の様子を伺うと、そこには原付が一台停まっていた。
原付のフロントライトが広場の中央にある金次郎像を明るく照らしている。
「前野、見えるか」
「ああ、誰だよあれ」
原付のライトが消えると、暗闇の中でその運転手が下駄箱に向かって歩き出した。
竹田と前野はぎょっとすると下駄箱の棚の裏に隠れ様子を伺う。
運転手はガラス張りの扉越しに、外から中の下駄箱の様子を見ている。
運転手はそのまま扉の右端から左端へ移動して、再び中腰になって扉越しに中をじっと見る。
「なんだあいつ……」
竹田は呟いた。運転手はその場から離れていくと、金次郎像の近くまで戻り、原付にまたがった。ライトを付けるとエンジンを鳴らして立ち去って行った。
下駄箱に静寂が戻る。
「ふう。びっくりさせやがる」
「誰だったんだ? あれ」
「知らないよ、前野。でも俺ら以外にも変わったことを企んでるやつがいるみたいだな」
「中止するか? 竹田」
「いや、続行しよう」
竹田と前野は、観音開きの扉の前に来ると、また手探りで扉に合う鍵を探し始めた。しばらくするとカチャっという音とともに扉が開いた。
「こっちは北校舎で合ってるよな。こう暗いと方向感覚も狂ってくるよ」
「ああ、竹田。こっちは北校舎だよ」
二人は扉を抜けて、暗い暗い通路をゆっくりと進んだ。辺りは静かで、暗闇の不気味な重圧が二人にのしかかっている。それは二人を潰そうとする悪魔が潜んでいるかのようだった。


前へ | 戻る | 次へ