ジョナサンは家から出ると村を出て近くの海岸まで歩いた。
海岸には白い砂浜と穏やかな海が広がっていた。日は高く心地よい温かさが砂浜全体を包んでいる。潮の匂いとざー、ざーという波の音が風に乗って流れてくる。
ジョナサンは海岸に立ってしばらく砂浜と海を見下ろしたが、すぐに歩みを進めて近くに建っている灯台に向かった。
灯台はところどころ錆びていて、かつては白かったであろう外壁が、錆によってその清純さを失っていた。
灯台の足元には麦わら帽子を被ったオス猫が一人立っていた。ジョナサンはその猫のもとに歩み寄る。
「こんなところに呼び出して、どうした」
「来てくれたんですね」
麦わらの猫はジョナサンに微笑んだ。
「仕事の依頼なら村の中でいいだろう」
「他人に聞かれたくなかったもので……」
「仕事はなんだ?」
「その前に……」
麦わらの猫は白いスーツの上着のポケットからハンケチを取り出すと、両手をそれでぬぐった。
「前の仕事は見事でした。私……私たちの依頼を完璧にこなしてくれました」
麦わらの猫はそう言いながらハンケチをポケットに戻した。
「あの一件で、私たち財団はあなたが信用に足る猫だということに、意見が一致しました」
ジョナサンは黙って聞いている。
「そこで新しい仕事なのですが、今度は美術館をお願いしたいのです」
「美術館?」
「そうです。東のグランバヒルにあるレインボ美術館です」
「レインボ……聞いたことはある」
麦わらの猫は微笑んだ。
「お昼になったら、10分ほど監視システムをダウンさせてほしいのです」
「その間になにをする?」
「それは、あなたは知らないでいたほうがいい」
ジョナサンと麦わらは沈黙した。
「報酬は?」
「前回の倍、でどうでしょう」
ジョナサンは上着からタバコを取り出すと、一本くわえて火をつけた。
「詳細を聞こう」
ジョナサンがそう言うと、麦わらは再び微笑んだ。


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