「何よ! この女たらしの甲斐性なし!」
ジョナサンの家の外ではマベーニャがかな切り声を上げている。
その声を聞いているのか、それとも聞かないでいるのか、ジョナサンは無表情にキッチンでコーヒーを淹れた。
「あんたなんか死んじゃえばいいのよ! 馬鹿! 馬鹿猫ー!」
マベーニャは道端の小石を拾うとジョナサンの家の窓に叩きつけた。窓はガシャーンと大きな音を立てて割れたが、ジョナサンは割れた窓を背にしてコーヒーをすすっている。
「マベーニャ! なにをやってる!」
その年老いているが威厳のある声を発したのは保安官のバブリーだった。バブリーはマベーニャを制止しようと両手でマベーニャの肩を掴んだ。
「何するのよ! 放しなさいよ! 私はあの女たらしに用があるんだから!」
ジョナサンはキッチンのテーブル前にある椅子に腰かけると、ナイフでハムを削った。
「わかった、わかった! 署で話を聞くから!」
「いやよ! 放してー!」
マベーニャとバブリーの声は次第に小さくなっていき、ジョナサンの家には静寂が戻った。
割れた窓のふちにしぶとく残っていた窓の破片が床に落ちて割れた。


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