月も出ていない暗い暗い夜、寂れた片田舎にある中学校の校門に、一人の男が立っている。
男はしばらくその場で周りをうかがうと、校門から学校の方へと進んでいった。道中は暗く、中央にはアスファルトが続き、左右には砂利が敷かれ、その横には生け垣が並んでいた。
男はすたすたとアスファルトの上を歩き、暗い闇の中を進んでいく。校舎入口の前には広場があり、その広場の中央には金次郎の像が立っている。男はその像の近くに進むと、ぴたりと止まった。
男がしばらくの間、その場で立ち尽くしていると、男が進んできた方向とは逆の方から、何者かが現れた。何者かはゆっくりと金次郎像の近くに来ると、男に話しかけた。
「竹田か?」
男は答える。
「そうだ。前野」
「暗いな。顔がよく見えない」
「前野、懐中電灯は持ってきたか?」
「ああ、竹田。持ってきた。これだ」
前野は手に持った袋から小さな懐中電灯を取り出すと、スイッチを入れた。
「待て、前野。外に灯が漏れる」
「ああ、わかった。消す消す」
前野はスイッチを切ると、暗闇の中で無言になった。
「さて、行くか」
「竹田。例のものは?」
「ちゃんと持ってきてる」
竹田はそう言うと、ポケットから鍵を取り出した。
「いざゆかん、放送室へ」
竹田がそう言うと二人は、校舎入口の鍵を先ほどの鍵で開けて、中に入っていった。


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