ここは猫の村。猫がいたるところにいる。
その中にジョナサンと呼ばれる猫がいた。
ジョナサンは真っ黒なオス猫で、すらりとした長い足を持つ細身の猫だった。
ある日、ジョナサンが家の農作業を終わらせて、近くの酒場に飲みに行くと、酒場のマスターがこう言った。
「おい、ジョナス。マベーニャは知ってるか?」
マベーニャとはこの村に最近越してきたメス猫のことだ。ジョナサンは「知っている」と答えた。
「マベーニャのやつ、お前のことを酒場で噂してたぜ。お前さんは『女たらしの甲斐性なし』だとよ」
マベーニャはジョナサンの元女房だ。ジョナサンはこの村に来る前に東の街でプログラマーをしていた。そのときの連れがマベーニャだ。
離婚してジョナサンがこの猫の村に引っ越すと、しばらくしてマベーニャはジョナサンを追うようにしてこの村にやってきた。
「モテる男はつらいねぇ」
酒場のマスターはにやりと笑うと、ジョナサンにそう言った。


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